自筆証書遺言の書き方と長所・短所
自筆証書遺言の長所・短所は
長所としては、誰にも知られずに作成・修正ができる点が挙げられます。特段、作成するための費用もかかりません。他方、短所としては、形式不備により遺言の有効性につき争いが生じたり、また、形式的有効要件は満たしているにしても、真意に基づくかについて疑義が生じて有効性が争われる危険性が公正証書遺言に比して高いことです。
さらに、せっかく作成した遺言書がそもそも発見されなかったり、悪意の相続人に偽造・隠匿される危険性もあります。なお、作成する際には費用がかからないとはいえ、検認手続きを経ないと遺言を執行することはできません。
もっとも、平成30年7月6日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立し、遺言者は、法務局に自筆証書遺言にかかる遺言書の保管を申請することができるようになりました。したがって、偽造・隠匿に関する自筆証書遺言の短所は、法務局による保管によって解消することができます。なお、令和3年8月2日法務局33号により法務局における遺言書の保管等に関する省令が改正され、同日より本制度に係る申請書、届出書、請求書への押印は不要となりました。
自筆証書遺言の書き方とは?
自筆証書遺言は、遺言者が全文・日付・氏名を自筆し、押印することが必要です。遺言内容を修正する場合には、遺言者が修正箇所を指定し、変更した旨を付記して署名し、変更箇所に押印する必要があります。
ただし、相続財産の目録を添付する場合には、目録については自筆する必要はありません。遺言者は目録の各ページに署名し、押印する必要があります。パソコンによる目録の作成や、不動産の登記事項証明書等の添付も可能です。
遺言書の自筆要件とその意義
遺言書において、全文・日付・氏名を自筆することが必要であることは、遺言者本人が書いたことを確認するために必要な要件です。自筆証書遺言の場合、偽装や変造の危険性が高いため、自書性については厳格な要件が課せられます。
ただし、高齢者や病気、障害等のため自書が困難な場合や、相続財産の特定が形式的である場合には、相続財産の目録については自筆する必要はありません。しかし、偽造や変造を防止するため、目録の毎葉には遺言者本人が署名し、押印する必要があります。
遺言書の自筆要件は、遺言者の真意を担保するために重要な要素です。そのため、自筆によって書かれた遺言書を作成する際には、厳密に自筆要件を遵守する必要があります。